2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

書き手の文学

個性などと言うフレームワークはそろそろ潰してしまう問題は、そうした「面白みの無い存在」としての、つまり理念として演じられる自己や自我というのに則って物を考えたり書いたりするのは、ひどく簡単だということだ。ある書式を覚えこみ、それに適合する…

小説の精度と作者の狡さ/中上紀『ニナンサン』藤野千夜『ネバーランド』

またまた先月号の話しで恐縮なのだけれど(いつも読み終わるのが遅いのです)、新潮4月号を読み終わった。チェーホフ未邦訳短編短編が載るということで楽しみにしていたのだけれど、所謂チェホンテ時代の売文小説ばかりで少々がっかりした。それはともかく、…

熟れた桃

(『春の桜』の続き) 先日ファミリーレストランで、上田さんに会ったとき、ぼくが無視をしたのは、上田さんのことが特に嫌いだったからではありません。そのときは特に、誰とも話したくなかったのです。誰の顔も見たくもない気分でした。誰とも話したくはな…

春の桜

さきほど、特に用があったわけではありませんが、河川敷に行ってきました。河川敷というのは、どこの土地もよく似ています。理由はよくわかりません。それほど大きくはないグランドが幾つか並び、心許ない木製のベンチがあり、野球のスコアボードの角がめく…