2005-11-19から1日間の記事一覧

サルトルな朝(その1)/『部屋』

朝起きると三時間しか寝ていないのに、どういったわけか、すがすがしい目覚めで、わけあって読むことにしていたのに読んでいなかった『水入らず』という短編集の中の、壁を思い出して探した。サルトルの短編のなかでもなかなかに評判のいい『壁』という行き…

現実という見通しのわるさ/『エレファント』

テレビをつけたらWOWOWでやっていたので見入ってしまった。コロンバイン高校の銃乱射事件を扱った映画なのだけれど、構成が非常に変わっている。被害者と加害者をそれぞれごったに交錯しながら捉え、ひとりひとりを背後からの映像で捉えていくドキュメンタリ…

小説としてのサルトルの小説/『部屋』(その2)

ダルベダ婦人はトルコ菓子をつまんだ。その上にふりかかっている砂糖の薄い粉を吹き飛ばさないように息をひそめて、静かに唇に近づけた。薔薇みたいな香りだわと思った。そして不透明なその肉にふいに噛みついた。口のなかが、腐ったような香りでいっぱいに…